王様のブログ

あなたはどれだけ知っている?枕にまつわる言葉の秘密

「枕を高くする」「枕を結ぶ」など、「枕」という言葉を使った表現は数多く存在します。
なかには、多くの人が耳にしたことはあっても、意味や成り立ちはよく知られていない言葉も。
今回は枕にまつわる慣用句・古事成語などの言葉の秘密を紹介します。

■枕を高くする

枕を高くするとは、心配事がなく安心して眠ること、あるいは安心している状態を表す、中国・戦国時代の古事成語です。
国同士の戦いが耐えない時代は、王や兵たちが眠りにつく夜中を狙って敵が襲ってくる可能性があります。
そこで敵が近づいていないか就寝中も警戒するために、人々は地面に耳をつけて眠っていたのです。
つまり、枕を高くして眠れるということは、もう敵の襲撃に怯えなくて良い状態。
今も昔も、枕はリラックスできる時間の象徴なんですね。

■枕を結ぶ

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「枕を交わす」「枕を並べる」など、枕という言葉は男女の関係を表す際にもよく使われます。
では「枕を結ぶ」とはどういう意味でしょうか?一見、この言葉も男女にまつわるもののように思えますが、実は全く違う意味です。
枕を結ぶとは、野宿すること、あるいは旅先で眠ること。草を結び合わせて束にして枕としたことに由来するそうですよ。

■邯鄲(かんたん)の枕

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「邯鄲の枕」は「邯鄲の夢」とも言われ、人生の繁栄や衰退が儚いことをたとえた中国の古事成語です。
ある青年が邯鄲という土地の宿で、女主人から不思議な枕を借りて一眠りしたところ、自分が皇帝になって華やかな生活を極め、50年もの時を過ごすという夢を見ます。
しかし女主人に起こされてみると、現実世界では青年が眠る前に女主人が炊き始めた粟のご飯すら出来上がっていないほど、わずかな時間の出来事でした。そして青年は人生は夢のように儚いと悟るのです。
この枕には不思議な力が宿されていましたが、思いもよらない壮大な夢を見て、目覚めてから夢の意味を考える経験は、現代人にも共通していますね。

■石に漱(くちすす)ぎ流れに枕す

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「我輩は猫である」「坊っちゃん」などの名作小説で知られる明治の文豪、夏目漱石。
彼の本名は夏目金之助といい、漱石はペンネームです。このペンネームの由来となったのが「石に漱ぎ流れに枕す」という古事成語です。
この言葉、なんだかおかしいと思いませんか?
寝るときに枕として使うのが「石」、口をすすぐのが「流れ(水)」と考えるほうが自然なのに、なぜ逆になっているのでしょうか?
実は、この古事成語は中国の晋王朝時代の政治家・孫楚(そんそ)の言い間違いが元になっています。
孫楚は「石に枕し流れに漱ぐ」、つまり俗世間から距離を置き自由に生きたいと伝えたかったのに、言葉の順番を誤って言ってしまったのです。これを友人にからかわれ、負けず嫌いな孫楚は、自分は言い間違っていないと主張し、こじつけの持論を展開してみせたそうです。
つまり、「石に漱ぎ流れに枕す」とは、頑固者のことを指す言葉なんですね。
夏目漱石は自分の性格にぴったりな言葉だと考え、この古事成語からペンネームをとったそうですよ。

どの言葉にも興味深いストーリーが込められていますね。紹介した言葉は「枕」にまつわる表現のほんの一部です。これだけ表現がたくさん生まれたのは、いつの時代も枕が人生のすぐ側にある、ということなのでしょうね。